朝のコーヒー1杯のためにお湯を沸かす。ソロキャンプでいちばん出番の多い道具は、テントでも焚き火台でもなく、手のひらに乗るシングルバーナーかもしれません。焚き火で湯を沸かすと20分かかる場面でも、バーナーなら500mlが3〜4分ほどで沸騰。
ただ、売り場には似た形のバーナーが並び、価格も4,000円台から2万円台までとかなりの幅。しかも秋冬になると、夏は問題なく使えていたバーナーが急に弱火になる「ドロップダウン」という現象も起きやすくなるので注意が必要です。選び方を間違えると、寒い朝にお湯が沸かずに震えることにもなりかねません。
この記事でわかること:
- CB缶とOD缶の違いと、ソロキャンプでの向き不向き
- 定番シングルバーナー6機種の重量・火力・価格の比較表
- 秋冬キャンプで火力を落とさないガス缶と使い方のコツ
- 買ってから後悔しやすいポイントと、併用すると便利な道具
ソロキャンプ用シングルバーナーはCB缶かOD缶かで選ぶ
シングルバーナー選びの最初の分かれ道は、使うガス缶の種類です。どちらが優れているというより、キャンプのスタイルで向き不向きがはっきり分かれます。
| 項目 | CB缶(カセットボンベ) | OD缶(アウトドア缶) |
|---|---|---|
| 形状 | 細長い円筒形 | 背の低いずんぐり型 |
| 価格の目安 | 3本パックで500〜700円前後 | 250g缶で1本600〜900円前後 |
| 入手しやすさ | コンビニ・ホームセンターで買える | アウトドアショップ中心 |
| 寒さへの強さ | 弱め(寒冷地用ボンベで補える) | 強め(イソブタン・プロパン配合) |
| 収納性 | 長さがあり、かさばる | クッカーの中に収まるサイズが多い |
| 向いている人 | 車で行くオートキャンプ・コスト重視 | 徒歩・バイク・登山を兼ねるソロ |
迷ったらCB缶から始めてよい理由
車でキャンプ場まで行くスタイルなら、最初の1台はCB缶タイプで困ることはほとんどありません。家庭用カセットコンロと同じボンベが使えるので、使い切れなかったガスを自宅で消費でき、停電時の備えも兼ねられるのがうれしいところ。1本あたりの価格はOD缶のおよそ3分の1から4分の1で、毎週のようにキャンプに行く人ほど差が開くでしょう。
OD缶を選んだほうがよいケース
一方で、バックパック1つで電車やバイクを使って移動する人や、標高の高いキャンプ場で冬も使いたい人にはOD缶タイプが合っています。本体を100g前後まで軽くでき、ガス缶ごとクッカーに収納できる組み合わせが多いのが強みです。
定番シングルバーナー6機種を重量・火力・価格で比較
実際にソロキャンプで使われることの多い6機種を、2026年10月時点の公開スペックと販売価格をもとに整理しました。価格は時期やショップで変わるため、目安として見てください。
| 順位 | 商品名 | メーカー | 燃料 | 重量 | 最大火力 | 価格の目安 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | レギュレーターストーブ ST-310 | SOTO | CB缶 | 約350g | 2.9kW | 約4,700〜6,500円 |
| 2 | ジュニアコンパクトバーナー CB-JCB | イワタニ | CB缶 | 約274g | 2.7kW | 約4,500円 |
| 3 | レギュレーターストーブ Range ST-340 | SOTO | CB缶 | 約360g | 3.3kW | 9,790円(参考価格) |
| 4 | マイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター SOD-310 | SOTO | OD缶 | 67g(ゴトク込み) | 3.3kW | 9,350円(定価) |
| 5 | 153ウルトラバーナー P-153 | プリムス | OD缶 | 116g | 4.2kW | 8,800円(定価)・実売7,000円台〜 |
| 6 | スタッシュ | ジェットボイル | OD缶 | 約200g(クッカー込み) | – | 20,350円(通常価格) |
シングルバーナーおすすめ各機種の特徴と向いている人

スペック表だけではわからない、使ってみて差が出るポイントを機種ごとにまとめます。
1位: SOTO レギュレーターストーブ ST-310
CB缶シングルバーナーの定番中の定番です。最大の特徴は「マイクロレギュレーター」という圧力調整機構で、気温が下がってガスの圧力が落ちても火力を一定に保ちやすい設計になっています。折りたたむと手のひらサイズになり、ゴトクも安定しているので、小さめのケトルなら安心して載せられるでしょう。価格は最安で4,680円前後からと手が出しやすく、最初の1台として選ぶ人が多い機種と言えます。
注意点: ボンベが本体のすぐ横にあるため、大きな鍋や鉄板を載せると輻射熱でボンベが熱くなりやすい構造になっています。メーカーも大きな調理器具の使用に注意を呼びかけているので、鍋のサイズは直径20cm程度までに抑えるのが無難です。
2位: イワタニ ジュニアコンパクトバーナー CB-JCB
カセットコンロの老舗、イワタニのシングルバーナーです。重量は約274g、最大火力は2.7kWで、連続燃焼時間はイワタニのカセットガス使用時に約120分。ハードケースが付属し、4,500円前後で買える点が魅力です。脚を広げたときの安定感があり、ボンベが火口の真下にくる縦型なので、輻射熱の心配が少ないのも利点です。
注意点: 圧力調整機構がないため、気温10℃を下回るあたりから火力の低下を感じやすくなります。秋冬に使うなら、後述する寒冷地用ボンベとの組み合わせが前提です。
3位: SOTO レギュレーターストーブ Range ST-340
ST-310の兄弟機で、火口の直径が66mmと大きく、炎が広がるのが特徴です。最大火力は3.3kWあり、メスティンやフライパンで炒め物をするときにムラなく火が回ります。ST-310と同じくマイクロレギュレーターを搭載し、外気温25℃〜5℃の範囲で火力が安定するとされています。参考価格は9,790円とST-310より高めですが、「調理もしっかりしたい」ソロキャンパーには差額の価値があるでしょう。
4位: SOTO マイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター SOD-310
ゴトク込みで67gという軽さが際立つOD缶バーナーです。すり鉢状のバーナーヘッドが風を受け流す構造で、風防なしでも炎が流されにくいのが名前の由来になっています。最大火力は3.3kWで、定価は9,350円。付属の3本ゴトクは小さめなので、直径の大きい鍋を使う場合は別売りの4本ゴトクを追加すると安定します。
5位: プリムス 153ウルトラバーナー P-153
重量116gながら最大4.2kW(3,600kcal/h)とハイパワーなOD缶バーナーです。お湯を沸かす速さを重視する人や、2人分の調理もこなしたい人に向いています。定価は8,800円で、2026年10月時点の実売は7,000円台から見つかります。長年売れ続けているモデルなので、交換部品や対応アクセサリーを探しやすいのも隠れた利点です。
6位: ジェットボイル スタッシュ
バーナーとクッカーが一体になった「湯沸かし特化」のシステムです。クッカー込みで約200gと軽く、ガス缶とバーナーをクッカーの中に収納できます。通常価格は20,350円と6機種で最も高価ですが、熱効率が高くガスの消費が少ないため、朝のコーヒーとフリーズドライ食品が中心のソロキャンプなら、荷物を最小限にまとめられます。炒め物などの調理には向かない点は理解しておきたいところです。
秋冬のソロキャンプで火力を落とさないガス缶と使い方

シングルバーナーの「冬に弱い」問題は、ほとんどがガスの性質によるものです。仕組みを知っておくと、どのボンベを選べばいいかが見えてきます。
ノルマルブタンは0℃付近で気化しにくくなる
一般的なカセットボンベの主成分であるノルマルブタンは、沸点がマイナス0.5℃です。気温が10℃を下回るあたりから気化の勢いが落ち、ボンベ自体も気化熱で冷えていくため、使っているうちに火がどんどん弱くなります。これがドロップダウンと呼ばれる現象です。
対策として、イソブタン(沸点マイナス11.7℃)を多く含む寒冷地用ボンベを選ぶ方法があります。CB缶ならイワタニ カセットガス パワーゴールドやSOTO パワーガス、OD缶ならプロパン配合の寒冷地用ガスが代表的です。通常ボンベより1本あたり100〜200円ほど高くなりますが、冬の朝に湯が沸かないストレスを考えれば十分に元が取れるはずです。
現地で実践しやすい冷え対策3つ
- ボンベを寝袋かテント内で保管する: 夜の間に冷え切ったボンベは、朝いちばんの火力が明らかに弱くなります
- 使う直前まで手で温める: ポケットに入れておくだけでも効果があります(カイロを直接貼るのは過熱の恐れがあるため避けてください)
- 風防で熱を逃がさない: 風が当たるだけで沸騰時間は数分単位で延びてしまいます。ただしボンベまで覆うと過熱の危険があるため、火口まわりだけを囲みます
テント内や前室では使わない
冬はつい前室や幕内で調理したくなりますが、一酸化炭素中毒の危険があるため、各メーカーともテント内での使用を禁止しています。一酸化炭素は無色無臭で、気づいたときには体が動かなくなっている恐れもあるほどです。風の強い日でも、タープの下など風通しの良い屋外で使うことが基本です。
シングルバーナーを買う前に知っておきたい後悔ポイント
実際にシングルバーナーを使い始めた人から、よく聞かれる「買う前に知りたかった」という声を集めました。
ゴトクのサイズと鍋が合わない
超軽量モデルほどゴトクが小さく、直径16cmを超えるフライパンやケトルは不安定になります。手持ちのクッカーの底の直径を測ってから選ぶと失敗しません。
点火装置が壊れやすい
圧電点火(カチッと押すタイプ)は、長く使うと火花が飛ばなくなるケースがあるようです。予備としてライターかファイヤースターターを1本持っておくと、点火装置が壊れても慌てずに済みます。SOTOやイワタニは点火装置の修理・部品交換にも対応しているので、壊れたら買い替えの前に問い合わせてみるとよいでしょう。
CB缶とOD缶を混在させて荷物が増える
バーナーとランタンで違う缶を使うと、両方のガスを持っていく羽目になります。シングルバーナーを選ぶ時点で、ガスランタンやツーバーナーなど他のガス器具と燃料をそろえておくと、荷物と管理の手間が減ります。
シングルバーナーと一緒にそろえたい準備物・装備ガイド
シングルバーナーは本体だけでは能力を発揮しきれません。組み合わせると使い勝手が大きく変わる道具を挙げておきます。
寒冷地用カセットガス
秋冬にCB缶バーナーを使うなら、寒冷地用カセットガスは必需品です。通常ボンベと見た目が似ているので、ラベルの「パワーゴールド」「パワーガス」の表記を確認して購入しましょう。
シングルバーナー用の遮熱板
ST-310のようにボンベが横にくるタイプには、遮熱板を付けるとボンベへの輻射熱を抑えられます。純正品のほか、各社から専用設計の製品が出ています。
メスティン
シングルバーナーとの相性が抜群なのが、アルミ製の飯ごうトランギア メスティンです。固形燃料に頼らず、バーナーの弱火で1合のご飯を約15分で炊けます。
折りたたみ式の風防
アルミ板をつなげた折りたたみ式の風防は、重さ100g前後で湯沸かし時間を大きく縮めてくれます。ボンベまで囲わないサイズを選ぶのがポイントです。
シングルバーナーのよくある質問

Q1. シングルバーナーとツーバーナーはどちらを買うべきですか?
ソロキャンプならシングルバーナーで十分です。ツーバーナーは2口同時に調理できる反面、重さが4〜6kgほどになり、収納場所も取ります。家族やグループで料理をする機会が増えてから検討しても遅くはありません。
Q2. CB缶バーナーは冬キャンプで使えますか?
使えますが工夫が必要です。マイクロレギュレーター搭載機と寒冷地用ボンベを組み合わせ、ボンベを冷やさないように保管すれば、気温0℃前後でも湯沸かしは可能です。氷点下が続く環境ではOD缶の寒冷地用ガスのほうが安定します。
Q3. ガス缶1本でどれくらい使えますか?
イワタニ ジュニアコンパクトバーナーの場合、カセットガス1本で連続約120分使えます。1泊2日のソロキャンプで湯沸かしと簡単な調理をする程度なら、1本で足りることがほとんどです。冬は消費が増えるため、予備を1本持っていくと安心です。
Q4. 他社のガス缶を使ってもよいですか?
各メーカーは自社指定のガス缶の使用を推奨しています。形状が合っても、接続部の相性によってはガス漏れの原因になるため、取扱説明書に記載されたガスを使うのが安全です。
Q5. 飛行機にシングルバーナーやガス缶を持ち込めますか?
ガス缶は機内持ち込み・預け入れともにできません。バーナー本体はガスを完全に抜いた状態なら預け入れできる場合がありますが、航空会社ごとに扱いが異なるため事前の確認が必要です。ガス缶は現地のアウトドアショップで購入する計画を立てておきましょう。
Q6. シングルバーナーの寿命はどれくらいですか?
本体は丁寧に扱えば10年以上使えることも珍しくありません。消耗しやすいのは点火装置とOリング(ガス漏れを防ぐゴム部品)で、使用前にガス漏れの音やにおいがないかを毎回確認する習慣をつけると長持ちします。
最初の1台を決めて、朝のコーヒーから始めよう
車で行くソロキャンプならSOTO ST-310かイワタニ CB-JCB、荷物を軽くしたいならSOTO ウインドマスターかプリムス P-153、湯沸かし中心ならジェットボイル スタッシュ。この3つの軸で考えると、自分に合う1台はすぐに絞り込めます。
秋冬に使うなら、本体と一緒に寒冷地用ボンベと風防を用意しておくことが肝心です。次のキャンプでは、焚き火の準備をする前にバーナーでお湯を沸かし、温かいコーヒーを片手に設営を始めてみてください。
